源氏物語の世界 日向一雅 

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 この本は、源氏物語の入門書として最適な本です。岩波新書の中では秋山虔さんの本が長い間、親しまれていましたが、今後はこの本がその地位を占めるものと思われます。
筆者は今年教育実習で来た生徒の主任教官で、本当ならば研究授業の時、見えるはずでした。しかしお身体の調子が悪く、あいにくの結果となってしまいました。
実習生が読んでおいてくださいと言って、ぼくの机に何気なく置いていった本がこれなのです。
何気なく読み始めたら、なかなかよくまとめられていたので、つい最後まで読んでしまいました。
光源氏の生涯が、ある意味で母親の形代に当たる藤壺、さらにはその形代にあたる紫の上に通じる系譜の上に成立した文学だということを、実にうまく説明しています。
形代(かたしろ)という言葉は聞き慣れないものかもしれません。簡単にいってしまえば、代替えということです。別の人で、その人の代わりをするということでしょうか。
それがやがて次の薫、匂宮にまでつながり、最後は浮舟の悲劇となります。宇治十帖も実にうまくまとめてあります。
名作を鮮やかに解説したわかりやすい本です。原作を読みながら、一読してみてはどうでしょうか。
授業をしていても、これだけ深い味わいを持つ本はそうないとしみじみ思います。源氏物語は生涯を通して、読んでいきたい作品のひとつです。
紫式部という女性の裏側に潜んでいた「憂し」という感情の意味を知ればしるほど、作家の内面がよくみえてきます。

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