待機晩成 笹野高史 ぴあ 2008年6月

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笹野高史といえば、近年は「武士の一分」の演技で日本アカデミー賞助演男優賞をとったことで、つとに名前が知られるようになりました。 しかし芝居が好きなぼくとしてはやはり「上海バンスキング」のバクマツの役が最高です。彼の吹くトランペットの音色も忘れられません。串田和美の率いる自由劇場に飛び込んで10年。とにかく役者が楽しくて仕方がなかったようです。
元々、造り酒屋の四男坊だったそうですから、甘えん坊だったのでしょう。若くして父母に死なれた彼を助けてくれたのは、兄たちでした。そのあたりの話は、読んでいても、ああ仲のいい兄弟だなあとしみじみしてしまいます。
いつもワンカットだけの映画出演も次第に場面が増え、彼の敬愛している渥美清が山田監督に話をしてくれたのがきっかけになって、次第にさまざまな映画に登場するようになりました。
また10年たったのを契機に、自由劇場を退団。この劇団にはなんといっても吉田日出子がいました。彼女の持つ独特の味わいが、この出色の舞台をつくっていたのです。
今でもあの上海バンスキングの舞台の雰囲気をよく覚えています。彼女の歌う、「林檎の木の下で」という歌は、耳に強く残っています。
その後、商業演劇の舞台にも出たり、中村勘三郎のコクーン歌舞伎に出たりと活躍の場所は広がる一方です。
それぞれ芝居のやり方が全く違うという話は、なかなか興味深いものでした。新劇との芝居のメソッドの違いは、どこからきているのでしょうか。大いに知りたいところです。
そんな彼も60歳を過ぎ、これからもいろんな角度から毎日違う演技をしたいと書いています。
いつもいつも待機することばかりだった人生のようですが、ひそこには確かな人を見る目が宿っているように感じました。

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