まわりまわって古今亭志ん朝 志ん朝の仲間 文藝春秋 2007年6月

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 とにかく志ん朝を悪く言う人はいないのです。志ん生の息子として生まれ、本当は噺家になる予定のなかった彼が、いつの間にか落語の第一人者になっていました。
まず第一に口跡がいいのです。そして江戸っ子の言葉遣いができます。さらには幼い頃から芸人の世界を見ています。自然と血の中に粋が醸成されていったのでしょう。
彼の一門がとにかく志ん朝のことを話し合った前作『よってたかって古今亭志ん朝』とこの本は兄弟の関係にあります。どちらも大変面白いです。
人のことを絶対に悪くいわない。そういう師匠も弟子達にはさまざまな表情をみせます。
その落差が実に面白いのです。
さらには芝居をめぐる三木のり平との関係。
あるいはタニマチやマネージャーとの仲など、どれも実に興味深いのです。さらには彼が復活させた浅草の住吉踊り。この話もいかにも志ん朝らしい華やかさに満ちたものです。
あまりにも突然に亡くなってしまい、その後の空白を埋められる噺家のいない時代が今に至るまで長く続いています。
もしかすると、身体の中に江戸の風が吹いている最後の噺家だったのかもしれません。
華やかでふわっとした彼独特の芸風はやはり一代限りのものです。

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