内儀さんだけはしくじるな…

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かみさん、カミサン、内儀さん…。いろいろと書き方はある。しかしここが肝心なところだ。
なんたって修行中はなにからなにまで、おかみさんの世話になる。
最近でこそ、内弟子なんてことはほとんどないけれど、かつては同じ屋根の下で暮らしていた。
それでなくても年頃の男が家の中でごろごろしてるなんてのは、実に見苦しい。
つい、文句の一つも言いたくなる。

弟子の方だって、自分が世話になってるのはあくまでも師匠であって、おかみさんの方は付属品だとつい思いがちだ。
それが甘いんだな。
師匠は当然のことながら、おかみさんに頭があがらない。なんたって若い頃苦労をかけたという負い目があるからね。
ということは、弟子はおかみさんを甘くみてはならんということになる。

ここにあげた2冊は傑作です。小三治の方は、おかみさん自身が書いたもの。
弟子との丁々発止が面白い。はじめての真打披露の様子なんか、なかなか泣かせる。
いつぞやテレビ化されて話題になった。
自殺した清水由貴子がおかみさん役でした。
母親思いの一途でかわいい子だった。かわいそうな死に方をしたもんだ。

もう一つの方はこれは弟子たちの対談集です。
ぼくにとっておかみさんの代表格といえば、やっぱり小さんの奥方、生代子さんかな。
しゃがれっ声で、太っ腹、自分のことを俺と呼んでいた。
弟子の鈴々舎馬風によれば、ものすごい夫婦喧嘩を平気でしていたらしい。
パチンコが大好きで、おかみさん会の親分だったとか。

馬風が入門してしばらくした頃、小さん師匠の財布から現金が抜かれる事件があった。その時はさすがの馬風師匠も疑われて、怖かったそうな。
その後、犯人がみつかってからは、急にやさしくなったらしい。
彼の新妻に向かって、おまえのかみさんはあたしの弟子なんだからねと言って、可愛がってくれたという。

まあ、男というのはかみさんには頭があがらないと相場が決まっている。
どこの世界もおんなじだ。
とくに若い時、苦労をかけるだけに、後々よくなってから、つい甘くなってしまうのだろう。
志ん生のおかみさん、りんさんの話などにも面白いエピソードがたくさんある。
お金があるといろんなものを買い込んだそうだ。
それをみんな弟子にやってしまったという。それが嬉しかったのだろう。
なめくじ長屋で辛抱し続けたんだからね。

今、一番最初に脳裡に浮かぶおかみさんといえば、なんたって海老名香葉子さんでしょ。
彼女はそれこそ、林家の大番頭そのものだ。

その他の世界で、似たような話を探すとしたら、やっぱり相撲界だろう。ここもおかみさんの陰の力でもっている。
右も左もわからない力士たちに、一から礼儀を教えていくんだから。

噺家諸君、おかみさんだけはしくじるな。
これは不文律なのだよ。

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