かなりな本です。
たいていの人はまず買うこともないだろうし、読まないと思います。
白酒師のファンでも買うかどうか。
しかし自分で落語をやる人にとっては、なかなかに含蓄の深い本です。
一言でいえば、パースペクティブにあふれています。
この噺のポイントはここだ、と教えてくれるからです。
彼の美学によれば、語り過ぎないこと。
たとえば、「千両みかん」では、若旦那が実際にみかんを食べるシーンを入れるか入れないか。
芝居じゃないんだから、あとはお客さんの想像力にまかせろというスタンスです。
入れごとの数も大切で、お客が噺に食いついてきたと思ったら、数を減らすことなど。
あわせて視線の大切さも。
ちゃんと定まって大きな声を出してると、お客さんは笑うとか。
師匠の雲助から教えられたことが数多く語られています。
この本は、インタビューをまとめたものです。
書いたものではないだけに、生の息づかいが感じられます。
最近はオチまでいかないと、お客が満足しないというのが、よくわかりました。
俗にいう「冗談オチ」では納得しないそうです。
またやりにくい噺というのもあげられています。
時代にあわせていくということなんでしょうか。
粗忽者の噺にしても、そこまでのはいないでしょとなると、客はひくそうです。
郭噺をいやがる女性客も多いそうです。
難しいですね。
内容は第1夜 「芝浜」
第2夜 「野ざらし」
第3夜 「明烏」
第4夜 「花見の仇討」
第5夜 「御慶」
第6夜 「二番煎じ」
第7夜 「錦の袈裟」
第8夜 「酢豆腐」
第9夜 「臆病源兵衛」
第10夜 「粗忽長屋」
第11夜 「目黒のさんま」
第12章 「らくだ」
第13章 「火焔太鼓」です。
学生時代の話もたくさん載っています。
ほんとに好きな人だけが読んでなるほどと思う類いの本なのかもしれません。
しばらくしたら、また読み返してみます。