実にマニアックな本です。
普通の人はちょっと読んでやめるかな。
しかしなるほど、その通りだと納得させられるところがあちこちにあります。
噺家のあり方について書いているところなどは、本当にその通りだと思わず頷いてしまいます。
10年も前の本です。
少し感想を書かせてください。
面白かったのは客を高揚させる声とは何かということでした。
心地よい高音を出せる噺家は、人気がでやすいとか。
先代文楽までさかのぼらなくていいのです。
今なら扇辰、兼好がそれにあたるでしょうか。
甲高い声とは全く違います。
声の質からいえば、白酒はみごとだと思います。
これはぼくの贔屓目でしょうか。
けっして彼は高音域を持っている訳ではありませんが…。
あとは「間」です。
これはフラより難しいそうな。
間がいいといえば、だいたい話はおさまります。
相手もなるほどとなるのです。
小三治などは間を持続できる希有な噺家です。
客をつかんで離さない力業を持っています。
普通は話し手も諦め、疲れてしまうギリギリまで、客を引きずり回します。
自分の世界に入ったら、出てこないのです。
間も音の一種なのかもしれません。
売れる噺家と売れない噺家の話も面白かったです。
嫉妬を抱けないような噺家は大きくなれないとか。
あの米朝でさえ、弟子の枝雀に嫉妬したのです。
落語は厄介な芸能です。
最近、ますますそう思うようになりました。