吾輩は猫である

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Photo by torne (where's my lens cap?)
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久しぶりに読み返しました。
言わずと知れた夏目漱石の処女作です。
誰もが知っています。
しかし最後まで読み切ったという人に、あまり出会ったことがありません。

不思議な本です。
今となっては難しい。
注釈なしに読むことは至難でしょう。
言葉だけじゃない。
世態、風俗、人情、全てが変わってしまったのです。

登場人物が実に愉快です。
ご隠居さんのところにやってくる熊さん、八つぁんのパターンかな。
まさに落語の世界そのものです。

漱石は三代目小さんを非常に高く買っていました。
相当に彼は落語を聞いてますね。
後半、水島寒月がバイオリンを買うシーンなどでは、「黄金餅」の道中付けが応用されています。

とにかく登場人物がユニークです。
珍野苦沙弥先生以下、迷亭、水島寒月、越智東風、八木独仙。
みな、高等遊民ばかり。
駄弁を弄する手合いというのはこの人たちのことを言うのかもしれません。

銭湯のシーンといい、苦沙弥先生の子供たちに対する愛情あふれる視線といい、一読の価値があります。
その他、次々と出てくる市井の民が実に愛らしい。

中でも圧巻は向こう横丁の角地にお屋敷を構える実業家・金田氏の奥方でしょう。
鼻の大きな、この人こそ世間そのものの代表です。
他にも多々良三平、古井武右衛門など、いくらでも登場します。

鋭い文明批評も随所にみられ、この本を読むにはかなりの力業がいるのかもしれません。
漢文、英文学の知識もそれなりに必要です。
しかしそんなことを除いても、やはり楽しい。
もう、これだけの質の作品は出てこないのではないでしょうか。

時代が要求していないのか。
読者がいないのか。
そこまではわかりませんけどね…。

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