海も暮れきる

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尾崎放哉の本を引っ張り出して読み始めました。
吉村昭著『海も暮れきる』です。
奥付をみたら昭和55年でした。
今から37年も前の本です。

あれから一度も読んでいません。
自由律俳句の授業をする時、荻原井泉水、種田山頭火とともに必ず紹介してきました。
それにしても、この人の甘えは度を超えています。
その輝かしい経歴に比べて、人間がむやみに卑しい。

吉村昭が小豆島を訪ね、放哉について訊ねようとすると、島の人たちはみな厭な顔をしたとあります。
金の無心はする、酒癖は悪い、学歴を鼻にかける。
最も嫌われるタイプの人間でした。

西光寺の南郷庵からは海が見えました。
瀬戸内の静かな海です。
わずか1年に満たない月日をそこで暮らし、亡くなります。
結核に蝕まれていた彼が、死ぬために辿り着いた土地です。

島に素封家で俳人の井上一二と、宥玄和尚のいたことが唯一の救いです。
妻はとうに彼の元を去っていました。
しかし私生活と句作とは別のものなのかもしれません。
放哉は今も多くの人に読まれています。

咳をしても一人
足のうら洗えば白くなる
いれものがない両手でうける
こんなよい月を一人で見て寝る
春の山のうしろから烟が出だした

小説のタイトルは「障子開けておく、海も暮れきる」からとったそうです。

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