点と線

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松本清張の小説『点と線』は時刻表を縦横に使い切った作品の一つです。
昭和32年から33年にかけて雑誌「旅」に連載されました。
この年は彼にとって記念すべき年でもあります。
『眼の壁』『ゼロの焦点』など、名作が次々と発表されました。

『点と線』は映画化もされ、後に生誕100年を記念してテレビドラマにもなりました。
鹿児島本線、香椎駅から少し離れた海辺でおこる情死事件を扱ったものです。
福岡署の古参刑事、鳥飼重太郎と警視庁捜査二課の刑事、三原紀一が二人三脚で謎を追っていきます。
一見すると、自殺に見えるものの、そこになにか不自然な作為が見てとれました。

背景にはある省庁の汚職事件がからんでいます。
事件の全容を知っている課長補佐と、料亭の女という関係にも因縁がありそうです。
東京駅の15番線ホームから二人が特急あさかぜに乗るところを偶然目撃した人がいました。
同じ料亭で働いている女二人です。

13番線ホームから偶然、彼ら二人を見たのです。
たった4分の間に限って、こちら側のホームから全てが見渡せるという事実を知っている人物がいました。
犯人の一人、器具工具商、安田商会の社長安田辰郎です。
割烹料理店の女中二人にわざと東京駅まで送らせ、目撃証人に仕立てたのです。

後半は犯行当日、商用で北海道に出かけていたという安田のアリバイを崩すところが最大のポイントです。
アリバイとはalibiと書きます。英語です。 現場不在証明というのがその意味です。
被疑者が犯行時間に現場以外の場所にいたという事実をさします。
語源はもとラテン語で、alius ibi。

刑事たちは最初列車の時刻だけを気にしていますが、やがて飛行機の存在に眼がいきます。
そこから一気に話が解決していくのです。
当時、飛行機を利用するということは、通常考えられないことだったに違いありません。
刑事たちの生活感覚からは、あまりにも遠すぎたのです。

丸1日かけて九州へ、北海道へと出かけていった時代の話です。
青函連絡船の乗客名簿偽造もトリックに使われます。
時代背景がとにかく古い。
しかし人間の描き方は秀逸そのものです。

結核で長く病に臥せっていた安田の妻が、時刻表に親しんでいたというのがこの小説の伏線です。夫婦の愛情が哀しい結末を生み出したと言えるのかもしれません。
松本清張の推理小説の中でも、『砂の器』と並んで代表作といえる作品だと思います。

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