山の人生

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柳田国男の文章の中で一番好きなのがこれです。
晩年の回顧録『故郷七十年』の中にあります。
こんなことが本当にあるのかと最初読んだ時に思いました。
とても信じられない。

十三になる男の子ともらってきた同じ年くらいの女の子。
男は山の炭焼き小屋で一緒に育てています。
どうやっても炭は売れず、空手で戻ってくると、飢えきっている子供の顔も見られずに昼寝をしてしまう。

眼が覚めると、小屋の口いっぱいに夕日がさしていました。
秋の末のことです。
大きな斧を磨いていた子供は「おとう、これでわしたちを殺してくれ」と言い、入り口の材木を枕にして二人、仰向けに寝ます。
それを見ると、くらくらして前後の考えもなく、二人の首を打落としてしまいました。
自分は死ねずにやがて捕らえられて牢に入れられます。

これがあらすじです。
原文を読んでみてください。
かわいそうですが、実に詩的な文章です。

彼が法制局の参事官をしていた頃、特赦に関する事務をしていて、一番印象の深かった刑事事件の一つだそうな。

この文章の中で一番美しいところは、秋の夕日が小屋いっぱいにさしている情景です。
それがなかったら、あまりに悲惨な話でしかない。
今日、なんとなくこの文章のことを思い出しました。
久しぶりに読み直してみたくなりました。

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