まことの花

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卒業式の季節です。
生徒に贈る言葉を書いてくださいと、図書の先生に言われました。
数日後、突然「まことの花」という短い詩句が浮かんだという訳です。

これは世阿弥が『風姿花伝』にしるした言葉の一つです。
観世流の能を大成した室町初期の猿楽師、世阿弥元清。
義満に見いだされ、その後数奇な運命をたどりました。
晩年は佐渡に流されもしました。

稽古の仕方について書かれた部分にこの表現が出てきます。
若い時は舞いも謡いも美しい。
これを「時分の花」と言います。
しかし年齢を重ねると、衰えが見え始め、かつての花は消えていきます。
それでも残る花があれば、それこそが「まことの花」なのです。

「我が身を知る心、得たる人の心なるべし」
まさに自分の現在の姿を静かに見つめながら、それでも花を失わないよう、「初心忘るべからず」の魂を持ち続けなければなりません。
限界まで自分を追い込み、まことの花を追い続ける。

これはあらゆる芸の道に通じます。
というより、よりよき人生を生きるための、含蓄ある言葉といえるのではないでしょうか。

かつてこの書は観世流の宗家だけに許された秘伝でした。
明治の末になって、やっと多くの人々の目に触れるようになったのです。

現在の宗家、観世清和が二十歳を過ぎた頃、父左近は黄色い風呂敷包みを取り出し、万一大きな災害にあった時、これだけを抱えて生き延びなければならない。家族などはどうでもよい。わかったかと告げました。

この書は一族が死に絶えても、おまえが命にかえて守り抜けと父が厳命したのです。
なかには600年近く守った『風姿花伝第六花修』が入っていました。

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