光の教会 安藤忠雄の現場 平松剛

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建築家、安藤忠雄が大阪茨木市に建てた「光の教会」はあまりにも有名です。中央の壁が十字に切られ、そこから外光が漏れて入ってくるのです。
この建築プランを作り出し、それを実際に施工するまでの様子をドキュメントにしたのが、この本です。
本当に低額予算で、どこまで教会側の意図に忠実な建築がたてられるのか。時はまさにバブル絶頂の時でした。
どこの建築会社も尻込みする中で、半ば物作りに魅入られたような会社が、やっとみつかります。
構造計算をすると、案の定予定の鉄骨では足らず、さらにコンクリートの量も並のものでありませんでした。
型枠職人はみな条件のいい、東京の現場へ出ていってしまいます。その中で、精緻なまでにコンクリートの型枠をつくれる職人を手配することは、至難の業でした。
また安藤忠雄自体、次々と設計プランの変更をしてきます。
彼は予算がないのなら、屋根なんかいらないとまで言い切るのです。
建築は確かにロマンです。しかしそれはたくさんの人間の労力の上に成り立っています。
若い頃、ヨーロッパへ行き、たくさんの建築物を見た話や、若い設計士たちに、次々と発する要求水準の高さには驚かされます。
しかしみなこの事務所の親分、安藤忠雄が好きなのです。人間的なその風貌を余すところなく伝えた本書は、実に生き生きとしています。
建築に興味のない人でも、最後まで納得して読まされてしまう本です。
今もこの教会を訪れる人は大変に多いと聞きます。それだけすばらしい建築に携われた人たちが、羨ましくてなりませんでした。
光と質素なものに対する憧憬が、みごとに描かれています。
久しぶりに、心躍るいい本に巡り会えました。

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