アジアの孤児でいいのか 姜尚中

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著者の姜尚中さんは政治学、政治思想史の研究者として大変有名です。新聞やテレビなどのマスコミにもよく登場します。
この本はある機会に知人から勧められました。ウェイツという会社名はその時はじめて聞きました。日本の現在の問題を次々と多くの気鋭の評論家に書いてもらっている出版社のようです。
個人的には他に読みたい本もあり、これからもチェックしていくつもりです。
さて内容はタイトルにある通り、アジアの中で孤立化を深めていく可能性を持った日本の現況に触れています。
ここ数年、日本は急速なアメリカ主導型世界戦略の中に組み込まれつつあります。
1979年を境に世界は大きな変貌を遂げました。
旧ソ連によるアフガニスタン侵攻、サッチャーの登場、中国のベトナム侵攻、さらに朴正熙大統領の暗殺…。
この頃から市場原理の働く新しい国家観が出てきたのです。簡単にいえば、愛国主義とでも言えるものでしょうか。
そこから現在のイラク戦争までは短い道のりだったともいえます。また現在北朝鮮を相手にしての協議も非常に難しいところへきています。北朝鮮が核爆弾を持ち、それを実験で証明した時、日本はどのような態度をとればいいのでしょうか。
特に憲法の問題とからめて、教育基本法をどう考えたらいいのか。憲法以前に教育を通して、心の変化を求めようとする多くの勢力があることを著者は見逃していません。
またアフリカのエイズ被害などについても、アメリカは貧しい人口爆発の地域に対して資本の投下をしないという、現実をあげています。高価なエイズ特効薬で人道支援をしても、対価がないという現実を冷静にみているからです。
テロリスト、原理主義などを殲滅しつつ、囲い込める国家を時と場合によって変更しながら進むというのが、アメリカの現在の方向性でしょう。
時に国連主導を叫ぶことがあっても、それが本意であるとは思えないと著者は述べています。
さて日本は朝鮮半島という難しい火花をかかえ、拉致問題を同時に解決しなければなりません。北東アジア全体のフレームの中でこの問題を考えていかない限り、時にヒステリックな言動だけが、一人歩きする可能性もあります。
社会構造がかつてとは異なり、都市住民先導型に変化しています。さらに学歴と職業のステータスが確実に固定化し、資産、所得の社会分化がいっそう明確になりつつあります。
かつての中間層は切り崩されてしまいました。そのことが都市において、ナショナリズム優先の知事を生む土壌になっているという事実をまとめています。
「今」はまさに動いています。それだけに状況を冷静に捉えることは難しいでしょう。この本が書かれた時点からもすでにかなり変化しています。
それでもなお、新鮮な視点がいくつもありました。これからも引き続き筆者の本を読んでいこうと思います。

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