虚像の砦 真山仁 

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 『ハゲタカ』で大ブレイクした真山仁の小説です。舞台は民放キー局。どこの放送局をイメージして書いているか、読んでいるとすぐにわかります。テレビ局はつねに放送法にしばられ、5年を単位とした許認可事業の枠で営業をしなければなりません。
ともすれば、時の政府に喙をはさまれる微妙な立場にあるわけです。この点が新聞社とは根本的に違います。
かつてカルト教団の報道で失敗をし、弁護士一家暗殺にまで導いてしまったこの放送局は未だにその影をひきずっています。
そこへ突如起こった中東での人質事件。政府が自己責任という言葉をさかんに言い始める中で、報道局はどのような姿勢を貫けばいいのか、苦悩します。さらには営業出の社長を中心とした現指導態勢の粉飾決算もからみ、5年目の許認可に揺れます。
ストーリーは敏腕ディレクターで記者魂に燃える風見、お笑い番組で飛ぶ鳥を落とす勢いの黒岩、人気ニュースキャスターの福森などを中心に展開していきます。
さらには伏線として民放各局の再免許を控えた総務省の調査官、織田が大切な役割を果たします。彼女は与党政治家たちから、厳しい処分をせよとせまられ、狭間で苦しみます。
次期社長を巡る画策、与党政治家、広告代理店。テレビ産業というものがどういう構造で成り立っているのかということが、これでもかと読者に突きつけられます。
民放はどこまでいっても広告で成り立っている私企業です。その限界も実に明確に示されています。キー局を中心としたネットワークも、今日収入源の取り合いで厳しさを増しています。特に地方局は独自の番組をつくるだけの人材と予算を持っていません。
さらには地上デジタル化への設備投入も想像を絶するものです。このようなしがらみの中でどこまで報道の良心を保てるのかという点が一つのポイントでしょう。
つい数年前に起こった事件に取材しているので、内容が生々しいです。この本を読み終わったことで、やっと『ハゲタカ』への準備ができました。これも楽しみです。

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