仕事道楽 鈴木敏夫 岩波書店 2008年7月

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 スタジオジブリといえば、今や知らない人は誰もいません。『崖の上のポニョ』はものすごい観客動員数だと聞いています。それくらい有名な会社です。しかし徳間書店から独立する時は、やはり一騒動あったそうです。
宮崎駿さんと二人三脚で今の仕事を始めた頃のことから、この本は書き出されています。というより、これは全部聞き書きをもとにして構成されたものだとか。
宮崎さんという人がどういう人なのかということが、そこにいるような感じで伝わってきます。
一言でいえば、柔らかいけれど、頑固で一徹な人という印象でしょうか。それに輪をかけて複雑なのが、プロデューサー高畑勲さんです。この人の逸話を読んでいると、こういう不思議なキャラクターの人と一緒に仕事をするのはさぞ疲れるに違いないという感想だけです。
とにかく誰かに会いたくないという理由だけを、その相手に向かって1時間も語り続けるようなキャラクターの持ち主なのです。一度話を聞いたら、絶対に忘れられない人になるのです。
仕事を一緒にしていくというのはやはり縁なのではないでしょうか。小さなスタジオでいいから、始めようということになりました。
徳間書店から独立したのです。アニメージュの編集をしていた鈴木さんはいつの間にか一緒になって作品をつくっていました。
よほど、相性がよかったとしか言えません。
筆者は高畑、宮崎の二人と教養を共有したくて、彼らがいいという本を片っ端から読みます。相槌をきちんと打てるようになりたいというのが、彼の願いでした。
鈴木さんは『風の谷のナウシカ』からジブリの専従となりました。凝り性の宮崎監督はラストのシーンを考えずに、突き進みます。そして次々と違う方向へ模索を始めます。それをディレクターの高畑さんは辛抱強く待ち、間に合わなければしょうがないと運を天にまかせる度量の深さをもっています。
こうした人々のチームワークが今のジブリを支えているのでしょう。ちなみにこのジブリというのはサハラ砂漠に吹く熱風のことだそうです。
企画は半径3メートル以内にいくらでも転がっていると呟く宮崎さんの創作現場の様子などは、NHKなどでも何回か放映されています。仕事を道楽のようにしてきたという鈴木さんならではの本です。つい最近、またプロデューサーに戻りたくて、社長業を別の人に譲りました。
不思議な縁で結ばれた人間のドラマです。一読の価値があります。仕事はやはり楽しくなくてはいけません。

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