この世で一番大事な「カネ」の話 西原理恵子 理論社 2009年1月

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 今まで読んだ「よりみちパンセ」シリーズの中で一番面白い本でした。このシリーズは若者向きに書かれているユニークな企画のものばかりです。いわば本音トーク全開の著作群といえるでしょう。
その中でもこの本はとくにお金にまつわる本音がこれでもかというくらい書かれていて、ついひきこまれてしまいます。
ぼくが今までに読んだ本の中で、金銭についてもっともシビアに書かれていたのは『ナニワ金融道』だと思います。あそこには容赦のない裏社会の実態がみごとにまとめられています。
それに比べれば、この本のインパクトは弱いものですが、しかし全てが実体験だという点で、かなりの迫真力があります。
とくに貧乏は循環するとよく言われる表現をそのまま描き出した冒頭の部分は圧巻です。
彼女の父親は結局博打が元で自殺を余儀なくされます。母親を殴打する光景を見続けながら育ち、なんとか自分はこの境遇から抜け出すべく、もがき苦しみます。
やがて東京の美大に入り、勉強を続けるかたわら、イラストレーターへの転身をはかります。その結果としてマンションを買い、やっと安定した生活が築けると思ったのもつかの間、父親と同じ道をたどるのです。これを血といったらいいのでしょうか。
さらには一番リスクの高いFX取引を始め、あっと言う間に一千万円を失います。それは本当にわずかな時間の出来事でした。
また結婚した相手からの暴力もやまず、夫とは離婚を決心します。アルコール中毒の夫は、その後病院に通いやっとのことで立ち直りますが、しばらく後に他界してしまいます。
お金を得るということがどういう意味を持つのかということをこれほど、本音で描いている本も珍しいのではないでしょうか。
その日の糧もないという生活が人をどのように変貌させていくのかということが、これでもかというぐらいリアルに描いてありました。若いうちに是非読んでもらいたい一冊です。

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