21人を抜いて真打になったばかりの春風亭一之輔が8月に本を出しました。
そのタイトルも『一之輔、高座に粗忽の釘を打つ』という一風かわったもの。
さっそく読んでみました。
前半は、50日間の真打ち披露の様子です。
幹部連中の挨拶にはじまって、この間、とりあげた噺の勘所を説明してあります。
誰に教わった噺で、ポイントはどこにあるのか。どこが難しいのか。
演者の話というのは、実際に高座にあがる立場としては、誠にありがたいアドバイスに満ちております。
さて後半はどうして噺家になりたかったのかということが中学時代あたりからの自分史とあわせて書き連ねてあります。
やっぱり面白いのは高校に入ってからの話でしょうか。
ラクビー部をやめてから落研の部室を発見し、そこから研究会を立ち上げるまでのエビソードはなかなかのものです。
大学に入って顧問の古今亭右朝師匠に合宿などで世話になった話は知りませんでした。
その師匠が亡くなるのと前後して、一朝門下に入門する時の様子も、これまた面白い。
いずれにしても勢いがあるということは結構なことです。
幸せな子供時代や、親の理解などとあわせて、奥さん、お子さんに対する愛情が滲んでみえます。
「囃されたら踊れ」というのが芸人でしょう。その意味で踊り続けてさて、何十年か後にどんな噺家になっているのか、楽しみなことじゃございませんか。
ぼくも「鈴ヶ森」「不動坊火焔」「茶の湯」など、いくつも参考にさせてもらっています。
これからも一カ所にとどまることなく動く芸を追求してもらいたいね。
8月の鈴本下席のトリは一之輔です。
彼がいかに期待されているかが、よくわかりますね。