鯉のぼりの御利益

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上梓されたばかりの本です。
一気に読みました。
東京かわらばん新書としては、これが3冊目です。
初の自伝ということもあり、ほぼ鯉昇師の全体像を網羅しています。

筆致はすごく真面目。
とにかく頭が下がります。
目次がすごい。
全部書くと大変なので、ほんのわずかだけ抜粋します。

師匠と一緒に段ボールで路上睡眠した日々。
庭に生えている”たんぽぽ”を食べる貧しい師弟の暮らし。
酒浸りの師匠が50歳で廃業。
お見合いを80回失敗。

師匠がよくマクラでしている話が、全て真実だったということがよくわかります。
小柳枝という師匠はとにかく伝説中の人物ですね。
こんな人はさすがに今はいません。
引っ越し代が払えずに、廃業しちゃうなんて、信じられません。
それもわずかな退職金を協会からもらうためなのです。

それでも鯉昇師はめげることなく、ひたすら落語をしてきたんでしょうね。
その姿が見えるような気さえします。
第二の師匠となった柳昇とは、必ずしもしっくりいっていた訳ではありません。
そのあたりの事情もなるほどと納得できます。

弟子へのメッセージや、志ん朝、談志との思い出、亡くなった喜多八師匠のことなど、とにかくいろいろなことが書いてあります。
本当に真面目な人です。
縁を大切にした。
だから生き残れたのかもしれません。
小柳枝師匠の元にいたから、噺家をやめなかったんでしょう。
それは自分でも述懐しています。

遠い空の下で待っている二人の師匠に、熱い思いを寄せている風情がいいですね。
長屋に住む住人たちが大好きなようです。
誰をも貶めることなく、楽しくその日を暮らす。
そういう人生に憧れている様子が、手にとるようにわかりました。

多くの弟子に囲まれて、晩年が豊かであるということは、それだけで本当に幸せな人生だと思います。

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